Ozmafia SS集 2019 - enty.jp


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2019年12月 限定SS 『杵と臼』

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カラミア「――餅つき?」

アクセル「はい。…………先日、別世界へ行った折、杵と臼を密かに購入してきました」

カラミア「密かにって、隠せるレベルじゃないくらいデカいんだが」

アクセル「それは、時空の歪みということで……。

              かの国では新年に餅をつき食すそうです。

              餅自体に興味はないのですが、味付け次第ではスイーツになると聞きました。

              ここは是非…………!」

カラミア「お、おう。そこまで言うなら付き合ってやるか」

キリエ「くっだらないですねぇ」

アクセル「出たな」

キリエ「私を虫のように言わないでください」

アクセル「虫のほうがまだ可愛げがある…………お前のように口うるさくなければ、人に危害を与えない」

キリエ「危害云々は種類にもよるでしょう。害虫をご存じないのですか?」

アクセル「知っている。お前はそれ以下だと言っているんだ」

カラミア「どうどう、そこまでにしろ。年の瀬にケンカするなっての」

キリエ「していませんよ。文句ならつっかかってくるアクセルに言ってください」

アクセル「僕はキリエが退席してくれればそれでいい」

キリエ「しませんよ。この執務室は私のテリトリーです」

カラミア「いや俺のだろ」

キリエ「ええ。でもボスの私物はコンシリエーレの私物でもありますので。

              私の物といって差し支えありません。

              で、餅つきについてですが」

アクセル「……………………話を聞いていたのか」

キリエ「当然。私の地獄耳をなめないでくださいね。

              アクセル、餅つきの手順を知っていますか?」

アクセル「手順……?」

カラミア「ぽかんとしてどうした」

キリエ「はあ……予想通り、知らないようですね。

            貴方のことです。杵と臼さえあればなんとかなると思い込んでいたのでしょうね」

アクセル「………………………………」

キリエ「長い無言は『そのとおり』とみなします。

              はあ、これだから低脳は困ります。脳を取り出したらきっと

              ブリキのようにカチンコチンなんでしょうね」

カラミア「そういうお前は知ってるのか?」

キリエ「当たり前です。起源やら歴史やらも存じていますよ。

              世界観が壊れるのであえて口にはしませんが」

カラミア「世界観って。ボスとして一応遠慮している自分が馬鹿馬鹿しくなるな」

キリエ「今更馬鹿をいくつ重ねても問題ないでしょう。

              クソ馬鹿ライオンなのですから。

              餅つきにはもち米なるものが必要ですが。

              アクセルのことです。当然、用意していないでしょうね」

アクセル「……小麦粉で代用できないのか」

キリエ「できるはずないですよ、お馬鹿さん」

アクセル「杵と臼さえあればなんとかなると思っていたが……」

カラミア「餅つきとやらはできないのか?」

キリエ「いいえ、できます。東の国からもち米を取り寄せましたので。

              し・か・も。私は優秀ですから、一晩たっぷり水につけてさしあげましたよ。

              感謝してくださいね」

アクセル「水につける……もち米に拷問を加えるとは」

キリエ「どうしてそういう発想になるんです?」

カラミア「日頃の態度のせいだろうな。

              昨日、珍しくキッチンを使ってるなと思ってたがそういうことだったか。

              で、そのもち米をどうするんだ?」

キリエ「浸水させた杵と臼を用意しつつ、もち米を蒸します。

              ちなみに、浸水には1日を要します」

アクセル「この道具も水につける必要があるのか?」

キリエ「ええ。乾燥していては割れますから。

              木こりだったならわかるはずでは?」

アクセル「…………ということは、今日は餅つきができないんだな」

キリエ「いいえ。そういうこともあろうかと、浸水させた杵と臼も準備済みです」

カラミア「つまり一式を用意してたってことか、準備周到すぎだろ」

キリエ「私を誰だと思っているんです? どこに出しても恥ずかしくないほど優秀な相談役ですよ」

カラミア「いやー、そこそこ恥ずかしいぞ。お前の自由っぷりは……」

アクセル「……………………ということは、僕が用意した道具は不要だったということか」

キリエ「置物くらいにはなるんじゃないですか、もしくは、来年活用してください。

              ソルジャーに命じて、もち米を蒸させています。

              さあ、庭へ参りましょう」

カラミア「お、おう……全部取り寄せて準備済みとか。

              アクセル云々言ってたが、単にあいつが餅つきしたかったんじゃないか?」

アクセル「キリエと思考が被るなんて…………………………サイアク」

カラミア「はは……まあ、そう言うな。全部用意してくれたんだからいいじゃねえか。

              餅つきやらを楽しくやって、新しい年を迎えようぜアクセル」

アクセル「……了解」

 

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夜分遅くに失礼します、ゆーますです。

 

最初は流星群祭に関する暗い話を書いていたのですが

年越せる空気ではなくなってしまったので

明るい掛け合い形式のものに変更しました。

ラジオ世界ではキリエも火星にいきますし、アクセルが杵と臼を日本で入手することもあるでしょう。

 

みなさまにとって今年はどういった1年だったでしょうか。

私にとっては振り返りと前進の年でした。

おかげさまでこうして月に1度OZMAFIA!!と向き合う機会があるのですが

舞台の再演という別の角度から作品を見るのは新鮮で刺激的でした。

グリムマフィア作りたいなーと思いましたし、いやいやそれよりもオズゼロですね。

LINEスタンプにしか出てきていないキャラクターの役割など

早くお知らせできればいいのですが、今は待つことしかできないので

のんびりとこの場を守っていこうと思います。

来年もポニパチェを何卒よろしくおねがいします。

GGRの収録は今月です、お便りおまちしております!

 

今年は仕事納めが29日だったはずなのですが

伸びに伸びて、仕事納めの概念が消えてしまいました。

まずは直近のタスクリストを片付けて、

ほっと一息つける時間を見つけることにします。

それでは仕事にもどります、よいお年を!

 

ゆーます


2019年11月 『キリエ断罪計画』台本
こんにちは、ゆーますです。

 

今回はなつかしの! PC版の店舗特典ドラマCDのひとつ

『キリエ断罪計画』の台本を引っ張ってきました。

 

権利上すべて配布できないのですが、トラック3の音声も一緒にお届けです。

こちらからのカッコ書き指示や、役者さん独自のアドリブなどなど

合わせて楽しんで頂けますと幸いです!

 

もしかしたら以前触れたかもしれませんが、

ボイスドラマのキリエってゲームのキリエと語彙が違うんですよね。

ゲームだと視覚的に文字がわかるので難読語をガンガン使用するのですが

ボイスドラマだと、瞬時に理解できない言葉は聞き手のストレスになってしまう可能性があるので

わかりやすい単語をリズミカルに畳み掛けるように、を心がけています。

 

初期の新人のような初々しいキリエも

現在の興津さんの中で完成しきっている熟したキリエも

どっちも違ってどっちもいいですね!

 

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■店舗特典 『キリエ断罪計画』■

 

//ソウのお店

 

SE・街中

 

【カラミア】「(ぶつくさ)ったくキリエのやつ、人使いが荒すぎるつーの」

【カラミア】「なんで俺が、あいつの分まで買い物をしないといけないんだ」

【カラミア】「っつーか、買い物自体は別にいい。問題は頼みかただ」

【カラミア】「どうして俺の大事な本を暖炉の火にかざしながら喋るんだ。燃えたらどうする」

【ソウ】「カラカラ、頭を抱えてどうしたの? どこかにぶつけちゃったとか?」

【カラミア】「ああ、ソウか。(笑い)いやな。ちょっとばかしキリエのことで悩んでてな……」

【ソウ】「(つられて笑い)もしかして、またイタズラされたとか? キリエも飽きないね」

【カラミア】「だな。あの性格、どうにかならないもんかねぇ。体がいくつあっても足りやしない」

【ソウ】「性格かぁ……(ハッと)あ、そうだ。オレ、いいもの持ってるよ! たしかポケットのなかに……」

SE・ポケットをゴソゴソ

【ソウ】「ええっと、あった。これこれ!」

【カラミア】「なんだ、なんかの種か?」

【ソウ】「うん。特別なお花の種だよ。食べた人の性格を変えちゃう不思議なシロモノなんだ」

【カラミア】「わ、マジかよ」

【ソウ】「うんうん、マジだよ。だってオレ、この間――」

 

//回想ここから

 

【ソウ】「(軽く驚き)――えっ、シーザーさんが夕食を作るんですか?」

【シーザー】「(ソウのテンションで)うんうん、たまには下僕孝行をしないとね」

【シーザー】「とびきりの肉料理を作るから、貴様はそこに座って待っててよ!」

【ソウ】「(戸惑い)は、はい……」

【ソウ】「シーザーさんが料理作ったこと、今まであったっけ……1度もないような……」

【ソウ】「包丁を握ってる姿なんて見たことないし、そもそも料理してる姿が想像できないし……」

【シーザー】「よーし。さっそくニワトリの首をサクッとキュッと締めにいっちゃうぞ~」

【ソウ】「ままま、待ってください。やっぱり、オレが作ります!」

【シーザー】「えーっ、どうして?」

【ソウ】「だ、だって……味が不安ですし、オレが作ったほうがいいんじゃないかなって」

【シーザー】「だいじょうぶだってー。普段食べてる味を再現すればいいワケでしょ?」

【シーザー】「殺したニワトリをむしってー、水で洗ってー、ざく切りにして……」

【シーザー】「あとは、なんか適当に調味料ぶっこんだらシチューになるはず! だよね?」

【ソウ】「て、適当はダメです……うう、ますます不安になってきました」

【ソウ】「あの、本当にいいですから。オレ、料理は大好きですし、気をつかう必要なんて全然ないですよ」

【シーザー】「もう、ソウったら心配性なんだから」

【シーザー】「それ以上口ごたえするなら、貴様の首もキュッとし締めちゃうよ♪」

【ソウ】「は、はいっ口答えしません! できあがりが楽しみだなー、はは……」

 

//回想ここまで

 

【ソウ】「(さめざめ)シーザーさんの料理、ほんっとうにマズくて、この世に存在しちゃいけないでしょってぐらいヒドくて。ううっ……」

【カラミア】「(ドン引き)わー……そのテンションのシーザー、見たいような、見たくないような……」

【カラミア】「つーか、どういう経緯でシーザーに種を食わせようって思ったんだ?」

【ソウ】「(ケロッとして)えっとね。たまたま森で見つけたから、身近な人で試してみようって思ったんだ」

【ソウ】「シーザーさんって基本引きこもってるから、ちょっとやそっとおかしくなったって誰にも迷惑かけないし」

【カラミア】「おまえ、ところどころシーザーの扱い悪いよな……それだけ仲がいいってことだろうけどよ」

【カラミア】「それで、性格は変わったままなのか? 後遺症とかは?」

【ソウ】「シーザーさんの場合、半日で元に戻っちゃったよ。後遺症は、うーん……今のところ特に見られないかな」

【ソウ】「種を直前に持っていた人と似た性格になるみたい。だから、食べさせ方にちょっとコツが必要かな」

【カラミア】「本人に渡して食べさせても、意味がないってことか」

【ソウ】「うんうん。(笑い)キリエの場合、『なんですかこれは』とか言って素直に食べてくれなさそうだけど」

【ソウ】「よかったら使ってみて。感想、楽しみにしてるね!」

 

              ■                         ■          

 

//ダイニングルームで思案

 

【カラミア】「(まじまじと見て)こんな小さな種がねえ……」

【カラミア】「直前に持ってたやつの性格に似るのか。誰に似せるかが重要だよな」

【カラミア】「例えば……俺だったらどうなるかな」

SE・効果音

【キリエ】「(カラミア風。明るく)私はキリエ。オズファミリーのコンシリエーレだ」

【キリエ】「武器の調達から夕飯の献立まで、なんでも相談してくれよ、お嬢さん」

 

【カラミア】「うーん。悪くはないが……自分と一緒ってのは、なんとなく気持ち悪いな」

【カラミア】「他には……アクセルとか」

SE・効果音

【キリエ】「(アクセル風。ぼそぼそ)カラミア、必要な書類はここに置いておく……」

【キリエ】「夕飯は……チョコレートだけで構わない」

 

【カラミア】「うん。ま、ありっちゃアリか」

【カラミア】「……変わり種として、お嬢さんとかどうかな」

SE・効果音

【キリエ】「(フーカ風。女の子)カラミアさん。一緒におでかけできて、私、とても嬉しいです」

【キリエ】「あ。あそこのお菓子やさん、アクセルくんが好きそうなお菓子でいっぱい! 少し、見ていってもいいですか?」

 

【カラミア】「うん、これはない。っつーかひどい」

【カラミア】「いっそ方向性をガラっと変えて、ヘイディとか?」

SE・効果音

【キリエ】「(ヘイディ風。オネエ)あら。アンタよくみたらいい男じゃない」

【キリエ】「減るもんじゃないんだから、そのマグナム触らせなさいよ」

 

【カラミア】「(引く)……いや、やめておくか。元に戻った後の復讐が怖いな」

 

SE・足音

【アクセル】「(カラミアに気づく)……ボス、こんなところにいたんですか」

【カラミア】「よし、アクセルにするか」

【アクセル】「え? ……なにがですか?」

【カラミア】「お、ナイスタイミング。いいところに来てくれたな」

【アクセル】「(困惑)はあ……もう昼ですから」

【アクセル】「あ、そうだ……キリエからの伝言です。少ししたら自分も昼食をとる。食事の用意をしておくように、と」

【カラミア】「あいつ、俺のことを完璧に召使いだと思ってやがる……」

【カラミア】「よし。アクセル、ちょっと手伝え」

【アクセル】「は、はあ……」

 

              ■                         ■          

 

//ダイニングルーム

 

SE・ドア

【キリエ】「おや、いい匂いですね。ひさしぶりに楽しい昼食になりそうです」

【カラミア】「ああ、きっと楽しいぜ。な、アクセル」

【アクセル】「……はい」

SE・椅子に座る

SE・スプーンを手に取る

SE・スープを飲む

【キリエ】「? これは……変わった味の実ですね」

SE・スプーンを乱暴におく

【キリエ】「この形状……、まさか――っ(口に手をあてる)」

【カラミア】「どんなブツか知ってるってか? さすが、博識なキリエ様だな」

【カラミア】「だが遅かったな。もう飲みこんじまったよな?」

【キリエ】「くっ……。ただでは済ませません、返り討ちに!」

SE・立ちあがる

【カラミア】「おまえ、そのスープを投げるつもりじゃ――」

SE・スープ皿を投げる

SE・スープがアクセルにかかる

【アクセル】「……っ。カラミアさん、大丈夫ですか」

【カラミア】「あ、ああ。アクセル、かばってくれたのか」

【アクセル】「ボスを守ることは、カポレジームの仕事ですから」

【カラミア】「そ、そうか。……キリエ」

【カラミア】「(驚き)おい、キリエ?」

【アクセル】「……気を失っているようですね」

【カラミア】「みたいだな。ソウのヤツ、失神するって言ってなかったが……」

【カラミア】「ま、命に別状ないならいいか。アクセル、スープまみれの服を着替えてこい」

【カラミア】「んで、キリエをサロンに運ぶのを手伝ってくれ」

【アクセル】「(キリエ風。サド)嫌です」

【カラミア】「……え?」

【アクセル】「聴こえませんでしたか? 嫌だと言ったんです」

【アクセル】「カラミアさんがひとりで運んでください」

【カラミア】「え、えええ……」

 

              ■                         ■          

 

//ダイニングルーム

 

【スカーレット】「……そう、事情はよくわかった」

【スカーレット】「何といえばいいか、その……はた迷惑だ」

【カラミア】「そんなこと言うなよ。頼れるのはおまえだけなんだ」

【カラミア】「ソルジャーたちに知られたら、メンツがつぶれるっつーか。良くはないだろ?」

【スカーレット】「それは、そうだが……どうして僕なんだ」

【スカーレット】「アンデルセンはともかく。パシェやロビン・フッド先生を選ぶこともできただろう?」

【カラミア】「あの2人に相談すれば、まずは説教からのスタートだからな」

【カラミア】「俺がしたいのは反省じゃなくて、相談だ。わかるか?」

【スカーレット】「わからない……。悔やむぐらいなら、実行しなければよかったのに」

SE・足音近づく

【アクセル】「(キツく)ボス、ここにいたんですか」

【カラミア】「うわ、来たっ」

SE・足音慌てる

【アクセル】「無駄です。小さいスカーレットの背に隠れたところで、僕からは丸見えですよ」

【スカーレット】「僕のことを小さいって言うな」

【アクセル】「小さいものを小さいと言ってなにが悪いんですか。ドブネズミ程度の身長しかないくせに」

【スカーレット】「ね、ネズミよりは大きい!」

【アクセル】「カラミアさん、どうして隠れるんですか。キリエの目覚めを知らせにきてあげたというのに」

【カラミア】「え、そうなのか? 俺はてっきり、キリエみたいに言葉攻めするためにかと……」

【アクセル】「冗談は間抜けな顔だけにしてください。あなたみたいなゴミライオンで遊ぶほど、僕は暇ではありません」

【アクセル】「ほら、行きますよ」

【カラミア】「お、おう……。じゃあな、スカーレット」

SE・足音遠ざかる

【スカーレット】「……話すだけ話して、行ってしまった」

【スカーレット】「アクセルさん……キリエさんが憑依したみたいに、性格が変わってたな」

【スカーレット】「……キリエさんがアクセルさんみたいに、アクセルさんがキリエさんみたいに、か」

【スカーレット】「プラスマイナスゼロじゃないか。何をやってるんだ、カラミアさんは……」

 

              ■                         ■          

 

//サロン

 

SE・足音近づく

【カラミア】「キリエ、目覚めたか。気分はどうだ?」

【キリエ】「(アクセル風。ぼそぼそ)……カラミア?」

【キリエ】「私は……。昼食をとっていたはずだが……気づけば、サロンのソファーで寝ていて……」

【キリエ】「なにが起こったのか、さっぱり……」

【アクセル】「(キリエ風。嫌味っぽく)カラミアさんがキリエに復讐したのですよ」

【カラミア】「(慌てて)おい、アクセル」

【キリエ】「復讐……カラミアが、私に……?」

【アクセル】「そうです。日頃の行いが悪いおまえを懲らしめようと、一服盛ったんです」

【カラミア】「一服って。あれは毒じゃない、性格が変わるだけで副作用はないときいてる」

【アクセル】「似たようなものでしょう」

【キリエ】「そう、か。……私は、誰よりもオズファミリーに尽くしていると自負していた」

【キリエ】「ファミリーのために身を粉にして、日々つとめていた」

【キリエ】「辛くても、耐えていた。書類を睨みながら、朝を迎えることだって何度もあった」

【カラミア】「いや、おまえが徹夜することって滅多にないっつーか俺が知る限りここ数年で1度も――」

【キリエ】「(カラミアの声をかき消すように)だがカラミアは、私のことを毒殺したいぐらい憎んでいたんだな」

【カラミア】「(焦り)ちがう、そういうわけじゃない」

【カラミア】「俺はただ、イタズラをされる側の気持ちを考えて欲しくて……。決して、おまえを憎んでるわけじゃない!」

【キリエ】「本当に?」

【カラミア】「ああ。なにに誓ってもいい。うそじゃない」

【キリエ】「……だったら、私を抱いてほしい」

【カラミア】「は……はぁ!?」

【キリエ】「私を、その腕で強く抱きしめてほしい」

【カラミア】「抱きしめてって、おま……」

【カラミア】「(混乱・耳打ち)おいアクセル、おまえってああいうヤツなのか。抱いてとか言っちゃう系なのか……?」

【アクセル】「(やや怒り)そんなことするわけがないでしょう。男同士で、気持ち悪いです……」

【カラミア】「だよな、そうだよな!?」

【キリエ】「……やはり、私が嫌いなのか。抱けないほどいとわしく、殺したいほど憎んでいるんだな……」

【カラミア】「あああそうネガティブになるな。わかった、抱きしめてやる!」

【キリエ】「カラミア……ありがとう」

SE・抱きしめる

【キリエ】「(耳元で・いつもの調子で)……ひっかかりましたね、クソ馬鹿ライオン」

【カラミア】「なっ!?」

SE・物を飲み込む

【カラミア】「(咳き込む)な、なんだ。今の……おまえ、俺の口に何を入れた!」

【キリエ】「貴方が私に飲ませたものと同じ種を入れたカプセルですよ。もっとも、私は飲んでなんかいませんけど」

【カラミア】「(悔しがる)おまえ、だましたのか」

【キリエ】「失礼ですね、自己防衛と言ってください。薬を盛られると予知すれば、避けるのが普通でしょう?」

【カラミア】「じゃあ、さっきの反応は……」

【キリエ】「アクセルを真似た演技にきまっているでしょう。ばーか」

【キリエ】「(嬉しそうに)……さて、カラミア。貴方に飲ませた種はどういう効果があるんでしょうね?」

【カラミア】「どういう効果って、誰かの性格が――はっ」

【カラミア】「おい、誰に触らせた……俺は誰になるんだ」

【キリエ】「さあ、それは秘密です」

【キリエ】「種を包むカプセルが体内で溶けるには時間を要します。その間、好きなだけ怯えていなさい」

【キリエ】「では、よい1日を」

SE・足音

【カラミア】「おい、待てキリエ! っておい、アクセルも去ろうとするな」

【アクセル】「どうしてですか? 僕は無関係です」

【アクセル】「性格が変わるだけで、副作用はないのでしょう? 堂々とその時を待っていればいいのでは」

【カラミア】「(女の子っぽく)そんなこと言わないで、一緒に解決方法を考えてくれないかな? ……あっ」

【カラミア(M)】「まさか俺、お嬢さんみたいになるんじゃ……!」

【アクセル】「……ふふ」

【カラミア】「も、もう。笑っちゃダメだよ!」

【アクセル】「カラミアさん……排水口のヌメリ以上に気持ち悪くて、目の毒です」

【カラミア】「待って。ひとりにしないでよ、アクセル~!」

 

//終わり

 


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2019年9月 限定SS 『王子の休日』アルファーニ カラミア アクセル

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舞台:路上

登場:カラミア アクセル アルファーニ

 

カラミア               「ふあぁ(あくび)」

アクセル               「カラミアさん……少々、気を抜きすぎでは?」

カラミア               「仕方ないだろ。寝不足の中、こんなにいい天気の中歩かされてさー(背伸び)」

アクセル               「見回りくらい、僕ひとりでもできるのに。キリエには困ったものです」

アクセル               「カラミアさんはキリエに甘すぎです。もっとこう、ガツンとやってもいいはずです」

カラミア               「ガツンと?」

アクセル               「はい。例えば窓から突き落とすとか、川に突き落とすとか、崖から突き落とすとか」

カラミア               「お、おう」

アクセル               「湖に鎮めるのもありかと。浮き上がってこないよう、ありったけの重しをつけましょう」

カラミア               「おうおう、過激なこって。アクセルは本当、キリエが苦手なんだな」

アクセル               「ええ、とても。心の底から。

僕からすれば、普通に接することができるカラミアさんは変です」

カラミア               「そうかねぇ。今でこそああだが、昔はそれはそれは可愛かったんだぜ?」

アクセル               「知っています。ですが――」

アルファーニ       「アクセルちゃーん!」

アクセル               「……はっ!」

アルファーニ       「んに゛ゃ゛」

カラミア               「なんだ……お前、アルじゃねぇか」

アルファーニ       「あいたたたた……ひっどいよ~、いきなり頭をポカ~ンて殴るなんて」

カラミア               「いやいや、今のはドンって感じだっただろ。お前、体半分地面に埋まってるじゃねぇか」

アルファーニ       「あはは、本当だ。アクセルちゃんは本当に本当に怪力だよね、すっごーい」

アルファーニ       「よいしょ、んしょ……あれ、あれあれあれ。大変だ、外に出られないや~」

アルファーニ       「でもでも、こうやって地面に埋まってるとみーんな巨人に見えて面白いかも~?

僕、このままでいようかな~」

カラミア               「やめろやめろ。無駄に騒ぎになる。アクセル、助けてやってくれ」

アクセル               「わかりました。はっ」

アルファーニ       「おおー、雑草みたいにブチって引っこ抜けた! アクセルちゃんはすごいねぇ」

アルファーニ       「(着地して)よっこいしょっと。服が汚れちゃったなー、でもまあいっか。

こういう日もあるよね~。えへへ~」

カラミア 「(ため息)アルは相変わらずマイペースだな。こんなところで会うなんて珍しいな、何してんだ?」

アルファーニ       「えっとねー、んっとねー。……なんだっけ? カラミアちゃん知ってる~?」

カラミア               「知るかよ。マンボイと一緒にすんなっつーの」

アルファーニ       「あ、そうそう! 僕、マンボイちゃんとお出かけしてたんだ」

アクセル               「おでかけ?」

アルファーニ       「んー。でもねでもね、一緒にはいなかったんだよ。

マンボイちゃんのあとをね、こっそりついてってたの」

カラミア               「そいつはお出かけじゃねぇな」

アルファーニ       「それも飽きちゃってー、お空が真っ青で日の光がぽかぽかしてて、

外はすっごいなぁって思って歩いてたらアクセルちゃんが見えたの。

だから会いに来たの、こんにちはー!」

カラミア               「お、おう……アクセル、こいつどうする?」

アクセル               「放っておくべきかと」

アルファーニ       「えーえー。そんなのつまんないよ、せっかく会えたんだもん。僕と遊ぼうよ~。ね?」

カラミア               「遊ぶって、例えば」

アルファーニ       「おままごとー」

カラミア               「幼児かよ……」

アルファーニ       「カラミアちゃんが圧政を敷く、国民にすっごく嫌われてる王様の役ね。

でもそれには深いわけがあるんだ~」

カラミア               「どんなわけが……いや、やらねーから。俺には大事な仕事があるんだよ」

アルファーニ       「仕事~? ただ歩いてるだけがお仕事なの?お仕事ってのは、

痛かったり痛めつけられたりするものじゃないの? ふふふ、変なの~(笑い)」

カラミア               「んだよ、俺は拷問なんざしない。……適任のやつがいるからな」

アルファーニ       「適任?」

カラミア               「なんでもない。とにかく、今は遊んでやれないんだ。また今度な」

アルファーニ       「わかった。今度っていつ? 明日? 明後日? 一週間後かな?」

アクセル               「アルファーニ」

アルファーニ       「(笑い)わかってるよ。大人の『また今度』は絶対ない、社交辞令ってやつだよね」

アルファーニ       「でも僕は、いつか遊べるって信じてるよ。信じればきっと、願い事は叶うんだ」

アルファーニ       「それじゃあね、ばいば~い」

アクセル               「(ため息)ようやく行きましたね」

カラミア               「ああ、どっと疲れた。……そこの店でちょっと休むか」

アクセル               「あ……あっちの店ではダメですか。おすすめのスイーツがあって……」

カラミア               「とか言って、お前が食べたいだけだろ~? いいぜ。さ、行こう」

 

■終わり■

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こんにちは、ゆーますです。

8月分に引き続き、

舞台オズマフィアのキックオフイベントかきおろし台本から。

 

カラミア+アクセル+アルファーニって、文字通り「発想にない」組み合わせで

情報公開というよりは、日常の一幕。

 

「アルは相変わらずマイペース」とカラミアが言っているのですが

実際は性格を把握するほど接点ないのではと思います。こちらも台本の都合に合わせた設定ですね。

以下、没にした台本の一部です。

 

カラミア 「(周囲を見渡しながら)はー、ここが六本木駅か。道中お疲れさん、アクセル」

アクセル 「はい、カラミアさんも……遠回りしましたが、なんとかたどり着いてよかったです」

カラミア 「まったくだ。まさか六本木一丁目駅ってのがあるのが思わなかったもんな」

カラミア 「(紙を取り出して)大体、キリエのやつが不親切すぎんだよ。見てみろこのメモ『六本木、黒いビル・ただし床のタイルは灰色、来ないと殺します』って」

アクセル 「相変わらず物騒だな。……しかし、考えれば考えるほど不思議です」

アクセル 「キリエとスカーレットとアルファーニで一体何をしているのでしょう?」

カラミア 「だなー。あいつら全然接点ないと思ってたのに、案外仲良かったりするのか?」

アクセル 「さあ。キリエのことはサッパリわからないので」

カラミア 「(笑い)あいつのことが完全にわかるやつなんてこの世に存在しないって」

 

 ※ナイフが突然飛んでくる

 

カラミア 「のわっ!?」

アクセル 「カラミアさん、大丈夫ですか」

カラミア 「お、おう……しかし、どうしてナイフなんかが……」

ドリアン・グレイ 「おや、カラミア君。それにアクセル君も」

カラミア 「ドリアン・グレイ……どうしてここに」

ドリアン・グレイ 「それはこちらの台詞ですよ。マフィアであるおふた方が六本木に何用で?」

アクセル 「(やや威嚇)質問を質問で返すんじゃない」

カラミア 「アクセル、大丈夫だ。知り合いだ」

アクセル 「知っています。ですが、あいつはナイフでカラミアさんの命を――」

ドリアン・グレイ 「(かぶせて)ああすまない、さっきのは完全なる事故だよ」

アクセル 「事故……?」

ドリアン・グレイ 「そう。たまたまここでのんびりと銀のナイフを研いてたところ、うっかり手を滑らせてね。びゅんと勢いよく飛んでいってしまったというわけだ」

カラミア 「はぁ……そんなことがあるんだな」

ドリアン・グレイ 「ふふ。そんなことも、あるのだよ」

ドリアン・グレイ 「しかし理由があるとはいえ、驚かせてしまったことには変わりない。マフィアを敵に回したくないしね。お詫びに、私の店に来ないかい?」

アクセル 「? 店を開いているのか……ここで?」

ドリアン・グレイ 「そう。とはいえいろいろ難しい法律にひっかかるので、向こうと同じとはいかないがね」

カラミア 「なんにせよ、おっさんのことだ。どうせいかがわしい店なんだろ」

ドリアン・グレイ 「まさか。この店がいかがわしいなら、この世界すべての店にモザイクがかかるよ」

ドリアン・グレイ 「ようこそ、『オスカー・タピルド六本木店』へ。君たちを歓迎しよう」

カラミア 「オスカー……なんて?」

ドリアン・グレイ 「『オスカー・タピルド』。いわゆる――」

アクセル 「(かぶせて)タピオカ専門店!」

カラミア 「おお、どうした」

アクセル 「すみません。つい理性が……なるほど、タピオカか。胃袋をつかもうとするとは」

<ここで、「あ、この台本は没だな」と思って書くのをやめました>

 

最初はオズのイベントらしい現地ネタをからめて書いていたのですが

作品を知らない人がテンションについてこれないだろうと判断しやめました!

オスカー・タピルドよ、安らかに眠れ。

 

8月分更新しています! あわせてよろしくお願いします→ここ


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2019年8月 限定SS 『6つのマフィア』ドリアン・グレイ カラミア アクセル

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舞台:オスカー・ワイルドの屋敷→道
登場:カラミア アクセル ドリアン・グレイ

ドリアン・グレイ 「(語り)それはまだ、街が6つのマフィアに支配されていた頃の物語――」
アクセル 「……はあ」
カラミア 「どうした、アクセル。なんだか落ち着かねぇな」
カラミア 「ま、無理もないか。キリエ抜きで『オスカー・ワイルド』領へ
来ることなんざ、今までなかったからな」
カラミア 「しかも平日に、だ。一体何が飛び出すのやら……」
アクセル 「ええ。……この館は不気味です。まるで四方八方から見られているような……」
カラミア 「……バンッ」
アクセル 「なっ!」
カラミア 「はは。ビビリすぎだ。お前はカポレジーム、幹部だろ?
もっとどしっと構えろって。な」
アクセル 「はあ……しかし、万が一ということもあります。
カラミアさんは少し楽観的すぎるかと」
カラミア 「『少しどころじゃありませんよ』……とか、キリエなら言いそうだな」
カラミア 「万が一のことが起ころうが問題ないさ。
大体、俺たちはちょっとやそっとのことじゃ死にや――」
ドリアン・グレイ 「(かぶせて)お待たせして申し訳ございません」
カラミア 「お、やっと来たか。どうした、遅かったな」
ドリアン・グレイ 「ええ。少々、裏でごたついておりまして」
アクセル 「裏?」
ドリアン・グレイ 「お気になさらず。マンボイがつつがなく処理することでしょう」
ドリアン・グレイ 「では早速本題に……と、アクセル君。立ち話もなんですし、座ってはどうです?」
アクセル 「いいや、ここでいい」
カラミア 「気にしないでくれ。こいつはいつもこうだ。
俺のまうしろにいたほうが、何かと都合がいいんだとさ」
ドリアン・グレイ 「(笑い)そうですか。大切なゲストを傷つけるなど愚かしいことなど
いたしませんが」
ドリアン・グレイ 「まあいいでしょう。では改めて……」
ドリアン・グレイ 「今日カラミア君をお呼びしたのは、あることを伝えるためです」
カラミア 「あること……?」
ドリアン・グレイ 「ええ。といっても大したことはありませんよ」
ドリアン・グレイ 「近日、オスカー・ワイルド・ファミリーを解散しようと思いまして。そのご報告です」
アクセル 「解散」
ドリアン・グレイ 「簡単に申し上げれば、マフィアを辞めるということです」
カラミア 「そいつは(思案)……辞めた後はどうすんだ。先生みたいに診療所でも開くのか?」
ドリアン・グレイ 「それもいいですが、競合相手が増えてはロビン君に嫌われてしまいますから。
カフェか……もしくは大衆が集える場を経営しようかと」
カラミア 「そうか……だが、どうして今話す? そういうのはマフィアの定期会合でもいいだろう」
ドリアン・グレイ 「勿論そちらでもお話する予定です。ですが本件に関して少々
キリエ君に手伝って頂きましたし、隠しておきたいことでもありませんので」
アクセル 「……わからない。どうしてマフィアを降りる?
僕は、これが僕たちに相応しい生き方だと信じている」
ドリアン・グレイ 「ええ、どうぞそのまま信じていてください。
何を信仰しようと自由です。神父として認めましょう」
ドリアン・グレイ 「同時に、私の信ずるものもどうかお認めください。
銃での抗争など汚く、醜く、実に美しくない」
ドリアン・グレイ 「結局の所、私ははみ出し者で。いつまでたってもみなさまのやり方に
慣れることができませんでした」
ドリアン・グレイ 「私には私の、得意なやりかたがありますので、そちらの道へ進みたい。ただそれだけです」
ドリアン・グレイ 「話は以上です。本日はお越しくださりありがとうございました」

※オスカー・ワイルド屋敷を去り、やや時間が経過して

カラミア 「マフィアを辞める、なあ……」
アクセル 「カラミアさん……ボスは、どう思いますか」
カラミア 「んー……わからない。お前がさっき言ってたとおり、
これが俺たちに相応しい生き方なんだ」
カラミア 歳を取らないし、死にもしない。普通の人間と明らかに違う俺たちは、
街の人にとって『特別な存在』としてみなされたほうが楽だ」
カラミア 「だからマフィアとして、土地を支配するものとして生きていくことに決めた。それなのに」
カラミア 「(ため息)やめようこの話は。
おっさんとは日頃交流ないしな、サッパリ理解できん。帰ったらキリエにでも聞くさ」
アクセル 「あいつ、話しますかね」
カラミア 「(笑い)さあな。敵に回しても味方であっても恐ろしいコンシリエーレ様だから。
でもま、何かしら教えてくれるだろう。頼れるやつであることは間違いない」
アクセル 「害悪でしかないと思いますが……あ、カラミアさん」
カラミア 「どうした。うまいスイーツ屋でも見かけたか?」
アクセル 「あ……はい。寄り道してもいいですか」
カラミア 「いいぜ、予定よりも早く終わったから」
アクセル 「ありがとうございます。では行きましょう」
カラミア 「おう!」

■終わり■

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こんにちは、ゆーますです。

大変お待たせしました、SSの更新です。

こちらは舞台版オズマフィアのキックオフイベント用台本として急遽かきおろしたものです。

というのも、頂いたイベントの進行台本に

「舞台の台本の中から声優さんに好きなセリフを言ってもらう」とあり。

カラミア・アクセル+娼館の面々って本編でほぼ関わりないですし

その場に来ているのは大半が役者さんのファンであって

まだ知らないキャラのセリフを他人に読まれても何も響かないのでは……??

と思い、保険として「作品を知らない人でも、雰囲気を読み取れる」「作品を知っている人にも、新しい情報を出せる」ものを用意しました。

没でもやむなしと思ってたのですが、役に立ってよかったです。

「カラミア&アクセル&ドリアン・グレイ」のかけあいでは

オズゼロより更に昔の部分を書きました。

オスカー・ワイルドがマフィアだった名残です。

正確さをだそうとするとアクセルは更に無機質、無愛想にすべきなのですが

セリフが少なくなってしまうため、そこらへんはボイスドラマ軸で。

最初はもっとふざけたものを書いていたのですが、

作品を知ってないとうすら寒いと思ったのでシリアスめに。

ボツ案は、9月更新分にくっつけておきますね。

消すのもなんなので、キリエ残しておきます!


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2019年7月 限定SS『小キリエの夏休み』
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「――それで、お前はいつまでここにいるんだ?」

 夏の始まり、とある朝。

 ダイニングルームを荒らしまくっている犯人の背中を、壁にもたれながら眺めつつ。

 カラミアは、ため息交じりに尋ねた。

「はぁ?」とため息交じりに振り向く少年の名はキリエ。

 屋敷に住んでいる相談役と区別するため、ここでは『小キリエ』と呼ばれている。

「いつまでって、しばらくですよ」

「その『しばらく』がどれくらいか聞いてんだ。

 大体、夏休みってなんだよ。」

「ボクの通っているスクールでは、夏のあいだずーっとお休みなんです。

 だからこうして、遊びに来てあげたんです、感謝してくださいね」

「誰がするかよ、さっさと帰れよ……」

「あっ。なんですか、その言い方。

 こんなにいたいけな子どもに対して、帰れって。1人で帰路につけと?

 危険だと思わないんですか、気遣いはないんですか、心がないんですか」

「うるせーうるせー。1人で来たんなら、1人で帰れるだろ」

「カラミア、一体誰と話しているのです? ……おや」

「うわ……」

 キリエとキリエの遭遇を目の当たりにしたカラミア。

 口が減らないヤツと口が減らないヤツが出会ってしまった。嫌な予感しかしない。

(大体、こいつら同一人物なんだろ。

 別次元とか難しいことはわからないが、同じ場所にいるのは問題あるんじゃねえのか?)

「ごきげんよう、小キリエ」

「ええ。お邪魔していますよ、キリエ」

「ふ……普通に喋ってやがる……」

「普通に? 相手は私ですよ、

 馬鹿な貴方よりもずっと言葉が通じますし、意思疎通も容易です」

「そうですよ。クソ馬鹿ライオンはこちらの世界でもクソ馬鹿ライオンなのですね」

(うわ、破壊力2倍……鼓膜への暴力がすぎるぞこれは)

「ところで小キリエ。貴方、さっきからごそごそと何をしているのです?」

「お腹が空いてるので、砂糖菓子を探しています」

「果物ならテーブルの上にありますが。菓子でないと駄目なのですか?」

「はい。砂糖たっぷりの、体に悪そうな焼き菓子が食べたいので」

「へえ。小キリエは甘いもんが好きなのか。キリエはそうでもないのに。なあ?」

 カラミアの言葉に頷くキリエ。

 

 サイズ以外は同じかと思いきや、個体差があるとは。

 他にはどんな違いがあるのだろうと、興味が湧いてくる。

(……って、駄目だ駄目だ)

 ダイニングルームにある砂糖菓子は大体がアクセルのもの。

 許可なく手をつけるべきではない。

「食べるなら外へ出ないか? 食べ歩きするとかさー。

 そこにありそうなやつはなんつーか……いろいろマズい」

「マズい? どういう意味ですか」

「それは……なあ、キリエ?」

 言葉の選び方を間違えると小キリエがギャンギャン騒ぐのではと、

 否が応でも慎重になってしまう。

 

 カラミアから視線を向けられ。

 考えを察したらしく、キリエは目を細めて「そうですね」と笑う。

「薄暗い隠し場所に保管されているようなものよりは

 出来たてのほうが美味しいでしょうね」

「たとえボクの提案だとしても、外は嫌です。

 夏ですよ、暑いですよ。熱中症になってもいいんですか?」

「ならば、対策を練ればいいこと。

 小キリエには麦わら帽子を買ってあげます。

 ……こんな日はアイスクリームが美味しいですよ。かき氷も悪くないですね」

「アイスクリーム、かき氷……むむむ……」

「おお、キリエがキリエにおされている……」

「相手は私ですが、しょせん子どもですからね」

「子どもとか、本人の前で失礼ですよ!」

 頬を膨らませながら、くるりと振り返る小キリエ。

「ですが、わかりました。

 そこまで言うなら外へ行ってあげましょう。

 夏休みのいい思い出になりそうですし。

 ではボクは出かける準備をしてきますね!」

 探っていた棚の扉を全開にしたまま、

 小キリエは軽快なステップで去っていってしまった。

(だから、夏休みってなんなんだよ)

 明確に定められた休日はオズ領にもあるものの、長期間の休みはない。

(どこまで教えてくれるかわからないが、聞いてみるのもアリだな。

 ……それにしても……)

「助けてくれてサンキュな、キリエ。

 あのままじゃ今ごろアクセルの菓子が食べられてた」

「どういたしまして。

 私も冷たいものを食べたいと思っていましたし、ちょうどよかったです」

「よかったって、まさか……」

「小キリエはこちらの世界の硬貨を持ってませんし、カラミアが奢りでしょう?」「やっぱり……あいつはともかく、お前は金をたんまり持ってるだろうが」

「馬鹿な、私もキリエの一員だというのに。キリエ差別はよくないです」

「なんだよキリエ差別って……」

「ふたりとも、まだですか? 早くなさーい」

「ふふ、廊下の向こうから私が呼んでますね。さ、参りましょう」

「参りましょうって……ったく」

 仕方がない、と毎度のように絆されながら

 2人のキリエの後を追うカラミアであった。

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こんにちは、ゆーますです。

今日は夕方から出張を控えており、

明るいうちの投稿となりました。

京都の7月は祇園祭を中心にワイワイガヤガヤしているのですが

室内に引きこもっている私はフェスティバルに縁がなく、

エブリデイ起伏のない隠居生活です。

なので、水で限界まで薄めたコーヒーのような日々なのですが

先週、諸事情で2本抜歯しまして!

永久歯を抜いたのは初めてだったので、7月いちテンションあがりました。

あーでも、正確には初めてじゃないかもしれません。

今年の前半に親知らずを抜きましたし。

親知らずを抜いた時は「せーの……はい!」みたいに

一本締めような、一瞬でガリッと砕く感じだったんですが

永久歯はぐらぐら揺らして、抜いていくんですね。

まずは塗る麻酔、次に打つ麻酔で痛覚を麻痺させて

次に抜きやすいように歯を削り

あとは器具で揺らして、メリッ……っと引き抜く。

その「メリッ……」がまるで体の一部をもぎ取られたような感覚で

背筋がぞぞぞーーーと凍るんですが

初めての体験が面白くて、血を流しながらフヘヘヘへって笑ってしまいました。

そういえば親知らずを抜いたときも笑ってましたし、

ギラン・バレー症候群のときも「指先に力が入らないと、じゃがりこのパッケージも開けられないのか!」と心躍ってました。

恐怖は感じなかったのですが、「恐怖に直面すると人は笑う」ってこういうことかもしれませんね。

普段得られない体験を楽しめるのは、安心や安全が保証されているからですし。

そもそも得られないままでいること、健康であることが何よりですよね。

ということで……

とても強引になってしまいましたが、

暑さに負けず、負けそうな場合は潔く避難し!

体調に気をつけて8月をお過ごしくださいませ。

ゆーます


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2019年6月 限定SS『ピースサイン』カラミア・ハーメルン

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――とある昼下がり、パシェの屋敷にて。

 

 会合を終え、マフィアのボスたちは部屋から去ろうとしている。

 

 誰よりも遅く立ち上がったハーメルンは、ふわぁと大きなあくびをしながら外へと向かう。

 しかし廊下を出ようとしたところで、誰かに肩を叩かれた。

 ゆっくり振り返り、首を傾げる。

 

「……なに、カラミア君?」

 

 眠気を我慢しながら、カラミアに引き止められる理由を考えてみるものの。

 

(いやー、ない。まっさらな紙のように、牛乳のように。何もない、サッパリだ)

 

「どうしたの?」

 

 再び尋ねると、カラミアは「気づいてないのか?」と尋ね返した。

 

「気づくって……」

「俺の変化に」

「カラミア君の?」

 

 ……一体なんだというのだろう。

 頭から靴の先まで観察してみるが、いつもと変わらない気がする。

 

(他人を観察することなんざ滅多にないし、

 カラミア君のことなんかぜーんぜん見ないもんなぁ。

 わからない……とあきらめるのは簡単だが)

 

 簡単に答えがわかってはつまらない。

 付け加えて。ギャンブル好きとして、負けた気がして単純に悔しい。

 

「ヒントもらっていい?」

 

 カラミアは「いいぜ」と頷くと、顔の近くへあげた右手で∨字を作ってみせた。

 

「ピースサイン?」

「違う、ヒント」

「ん~~~……」

 

 腕を組み、角度を変えてカラミアの指を眺める。

 ……が。

 

「降参。サッパリわからない」

「マジかよ……」

「なんだ、ガッカリすることなのか?」

 

「そいつは悪かったな」と軽く謝りつつ、答えを尋ねた。

 

「2キロ痩せたんだよ」

「……あ?」

「だから。2キロ、痩せたんだ」

 

 ニコニコとニヤニヤの中間のような笑顔。

 

(うわ、反応に困る……)

 

 ハーメルンはロビン・フッドと体重について話したことがあるものの、

 それは不規則な生活を咎められた流れでだ。

 

(カラミア君、ダイエットしてたってこと?)

 

 大の男――しかもマフィアのボスがそんな乙女のようなことをするとは。

 

(これがドリアン君なら笑い飛ばすけど、カラミア君だしなあ。

 何が正解なんだ)

 

 脳内会議にしばし時間を費やした後。

 ハーメルンは「キリエ君になんか言われた?」と伺った。

 

 カラミアは「どうしてわかった」と言わんばかりに目を丸くしている。

 

(当たってよかったというか、やっぱりなというか……)

 

 無邪気な笑顔で邪気を放つオズファミリーの相談役を思い浮かべつつ。

 

「見た目はともかく。健康に気をつかうのはいいことだ。

 ロビン君に言ってみたら? 褒めてもらえるかもよ」

「マジか。あとで寄ってみるぜ」

 

(……いやー、ロビン君はきっと困惑するだろうな)

 

 絶対その場に居合わせなければと、脳内で今日の予定を整理する。

 

「――2人とも、何をしている。

 会合はとうに終わった、速やかに退出せよ」

「わかってるさ、ネコねーちゃん」

 

 カラミアはハーメルンに「サンキュな」と言って、先に去っていった。

 

「サンキュ……? 一体なにを話していた」

「気にするな。ただの『ガールズトーク』だ」

「ガールズ……なんだと?」

 

 ハーメルンは「なんでもない」と笑い、カラミアを追うように部屋から出ていく。

 

「にゃむむ……」

 

 ハーメルンの揺れる後ろ髪を眺めながら、パシェは会合部屋の扉を閉じた。

 

 

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こんばんは、ゆーますです。

 

改めまして、6周年ありがとうございます!

 

開発が止まっている現在ラジオ更新のみが続いていますが、

こうして長い間情報を発信できるのはみなさまのおかげです。

本当にありがとうございます。

 

明日のことになりますが、オズマフィア関連でひとつお知らせがあります。

ゲームに関わることではないので大きな期待は禁物なのですが、

オズの展開のひとつとして何かしら動いている様子をお見せできることは単純に嬉しいです。

 

抽象的な話になってしまってすみません。

7月1日17時に情報解禁!らしいので

明日の夕方頃オフィシャルTwitterなどをご確認いただけますと幸いです。

 

それでは7月もよろしくお願いいたします!

 

ゆーます


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<Vol.14 OPボイスドラマ 原稿>

 

背景:オズファミリーの屋敷・ダイニングルーム

 

SE:皿を置く(×3)

◆注釈◆ステックフリット→塩で味付けしたシンプルなステーキに

フライドポテトを添えた料理

 

カラミア 「お待ちどーさま。今日はステックフリットだ。さ、召し上がれ」

キリエ   「ふう、また今宵もクソマズ晩餐会が始まるのですね」

 

SE:カラミア、椅子に座る

 

カラミア 「んだよ、嫌なら食うな」

キリエ   「誰も嫌だと言ってないでしょう? 

大地の恵みにだけは感謝し、いただきます」

カラミア 「俺にも感謝しろよ、ったく……」

 

SE:金属音(フォーク、ナイフ)

 

アクセル 「カラミアさん、ホイップクリームの用意ありがとうございます」

カラミア 「ん? ああ、どういたしまして。

フライドポテトに合うかどうか疑問すぎるが、

人の好みはそれぞれだからなー。喜んでもらえて嬉しいぜ」

アクセル 「はい。…………? カラミアさん」

カラミア 「なんだ」

アクセル 「カラミアさんのポテトの量、少なくありませんか」

キリエ   「ほう。アクセルのグロいポテトが印象的すぎて気づきませんでしたが。

 確かに、意図的に減らしているように見えますね」

カラミア 「あー……最近、ふと……った、きぁーして……」

キリエ   「はぁ?」

 

SE:フォークを投げる

 

カラミア 「危なっ! フォークを投げるな!」

キリエ   「問題ありません、デザートフォークです」

カラミア 「小さけりゃいいって問題じゃないだろ」

キリエ   「いいえ、小さいことは問題です。

小声かつ不明瞭で聞き取れませんでした。ハキハキと話しなさい」

カラミア 「ハキハキとって……」

キリエ   「次は心臓を狙いますよ、ナイフで」

カラミア 「ああ、わかったわかった!」

カラミア 「……最近、太った気がするんだよ。

バカ食いしてるつもりはないんだが、ないからこそ気になるっつーか」

キリエ   「ふうん……。我々はマフィア。

体型を売りにしている職業ではありませんし、

他人に迷惑がかからない範囲であれば気にせずともよいのではと思いますが。

悪くない心がけですし、ここは素直に称賛してあげましょう。

おのれを甘やかした結果、ぷくぷくライオンになられるのは

同じファミリーとしていささか恥ずかしいですし」

アクセル 「ああ。ヘイディと見分けがつかなくなるのは………………困ります」

カラミア 「あれは特殊だ、努力したところでなれないだろ」

キリエ   「(流れるように)とはいえ。太りたくないのであれば、今日の夕食はミスチョイスですよ。

ステーキにフライドポテト? ハイカロリー二重奏じゃないですか。ああ罪深い。

特に油で揚げたポテトを食べながらダイエットを宣言するなど、

非暴力主義を唱えながら相手の右頬を思い切り殴るようなものです。

そうだ、食べるなら庭の雑草を口にしてはいかがです?

あれらは生え放題、食べ放題。パパママにっこり、みんな大好きビュッフェスタイルですよ。

ああでも私が育てている草花には一切手を付けないでくださいね。

中には貴方の年収の5倍以上するものもありますし、不快不愉快不埒です。

万が一食べてしまった場合は貴方のお腹をかっさばいて取り出すということで。

(切り返し)いいですね?」

カラミア 「よかねーし、称賛してねえーし、うるせーし……

そういうツッコミが嫌だから言いづらかったんだよ。                

……ってかさ。少食のキリエはともかく。

            なんでフツーに生活してる俺が太って、アクセルが太らないんだよ。

            世の中の法則ねじ曲がりすぎてませんこと~?」

アクセル 「それは――」

キリエ   「ねじ曲がってませんよ。

アクセルは元はブリキ製。ちなみに私はカカシ。

いくら養分を取り入れても変わらないんです。

ルーツが『生き物』の方は不便で哀れで可哀想ですねえ」

カラミア 「ぐっ……」

アクセル 「……カラミアさんの場合、デスクワークが多いのも原因かと。

            巡回の仕事を増やすのはどうでしょう」

カラミア 「そうしたいのはやまやまだが、書類仕事が多くてなー。

椅子に座りながら痩せら+れたらいいのに」

キリエ   「なにを、思春期の乙女のようなことを……。

痩身を考えているのなら、仕方ありませんね」

カラミア 「ん?」

キリエ   「今晩のデザートにケーキを買ってきたのですが、

カラミアは食べないということで……」

カラミア 「はぁ? 食べる、食べます! キリエのおごりなんて珍しい!」

アクセル 「カラミアさん……」

カラミア 「あー……ダイエットは明日からってことで! いいだろ、キリエ?」

キリエ   「ふふ、ぷにぷにライオンになっていくさまを観察するのも面白そうです」

アクセル 「キリエ…………まさか、カラミアさんを太らせる気で買ってきたのか」

キリエ   「さあ、どうでしょうね?」

 

■終わり■


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2019年5月 限定SS『陽がさす前』カラミア・スカーレット

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――日曜、早朝。

 

 僕はグリムファミリーの屋敷をそっと出て、街へ続く道を進む。

 道の先には天を貫くほど高い塔。

 太陽はまだ完全に目覚めておらず、あたりは薄暗い。

 

(この時期の見回りはこのくらいが丁度いい)

 

 あまりにも暑いと、外出が億劫になってしまう。

 ハーメルンさんではないのだからサボったりはしないけれど。

 僕だって、面倒とかやりたくないとか、怠惰な感情は持ち合わせている。

 

(日曜だから、少し遠出してみるのもいいな)

 

 立場上、単独で他領へ入るのは好ましくないが

 日曜協定を主張し喧嘩沙汰にさえならなければ問題ないはず――。

 

 そう考えた僕は好奇心に身を任せるまま、まっすぐ進んだ。

 

 塔の横を通り過ぎ、赤いレンガ道へ一歩踏み込む。

 

(誰もいないせいか、悪いことをしている気分だ)

 

 くす、と笑いながら歩を進める。

 一歩、一歩。あたりを見ながら。

 

(……やっぱりグリム領とは違うな)

 

 匂い、建造物の形、色。

 別世界――と呼ぶほどではないが。

 ファミリーの特色が出るものだなと改めて思う。

 

(さすがに、オズの屋敷まで行くのは駄目だな。

 回り道しながら引き返そう)

 

 そう思い、曲がり角に入った瞬間――。

 

 ドン、となにかに強くぶつかった。

 

「うわああ!」

「おわああ!」

 

 驚き、お互いに叫び声をあげる。

 ……叫び声?

 

(ということは、当たったのは人間か?)

 

 おそるおそる確認すると、そこにはカラミアさんが立っていた。

 

「なんだ、スカーレットか。驚いたぜ……」

 

 いつもの外套及びスーツは来ておらず、上はシャツ一枚。

 随分軽装だが……。

 

「カラミアさん……朝まで飲んでたのか」

 

 額の汗を腕で拭き取りながら「あ?」と返すカラミアさん。

 どうやら違うらしい。

 

「失礼した。ハーメルンさん……ボスが軽装の時は、大抵飲んでいるときだから」

「ああ、そういうことか。

 いや、俺は走ってたんだ。

 早朝は大通りすら人がいないだろ?」

「走る……追われてるということか」

「違う違う」

 

「相変わらず頭が固いよな」と笑われてしまった。

 ……柔らかければ、カラミアさんの行動を容易に理解できたのだろうか。

 

「運動だ。ダイエ……いや、健康のためにさ」

「健康……」

「そう。体作り。俺達マフィアには大切だろ?」

「まあ……そうだな」

 

 体力を作らなくてはいけないのは、戦闘員であるソルジャーだ。

 ボスのカラミアさんはさほど必要ないような気がするが。

 

(いや……オズファミリーはそういう方針なのかもしれない)

 

 彼の真面目さをハーメルンさんも見習ってほしいものだと思いながら、

 僕は外套を深くかぶる。

 

「僕は巡回ついでの散歩だった。

 前方をよく見ずすまなかった」

「そいつはお互いさまだ」

「では、これで――」

 

 きびすを返したところで

 ポケットに入れていたあるものを思い出す。

 

「……カラミアさん、これを」

「ん?」

「昨晩焼いたビスケット。ぶつかってしまった詫びだ」

「いや、俺は……」

「受け取ってほしい。では」

 

 頭を下げ、僕はそそくさと立ち去る。

 ……半ば強引に押し付けてしまったが。持ち合わせていてよかった。

 

 太陽が街を照らしていく。

 陽の光が布越しに僕に触れる。

 

 7日おきに訪れる、安息の日。

 今日は穏やかに過ごせますように。

 

    ◆    ◆

 

「……ビスケット……。

 アクセルにやるか……いや、でも貰い物を流すのもなあ……。

 どうしてみんな、俺を肥やそうとするんだ……?」

 

 

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こんばんは、ゆーますです。

 

先日無事、GGRの収録が完了しました!

メールを投稿してくださった方、ご協力まことにありがとうございました。

 

収録時、2ヶ月ぶりにまともに人と接したのですが

人間に擬態できてるかずっと不安でしかたなかったです。

これからはもう少し人間社会に溶け込めたらなあと思うのですが

単独行動が好きすぎる……。

コミュニケーションは来世で頑張ろうと思います。

 

それでは、次はいよいよGGR!

シークレットレイディオは先行してアップする予定です。

まだデータを受け取っていないので具体的な時期は出せないのですが

6月半ばには配信できればと考えております。

どうぞお楽しみに!


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2019年4月 限定SS『ぷにぷにライオン』
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 ――ある夜、オズファミリーの屋敷にて。

 

 カラミア、アクセルはダイニングルームで食事を摂っていた。

 

 2人だけではない。

 

 普段であれば、外で済ませているはずのキリエも、

 今日は珍しく同席していた。

 

 今日の夕食はステックフリット。

 塩で味付けしたシンプルなステーキに、フライドポテトを添えた料理だ。

 

 フライドポテトの食べ方は三者三様で

 カラミアはケチャップ、キリエは塩。

 そしてアクセルは大量のホイップクリームをつけて食べている。

 

 気持ち悪い、エグい、グロいとキリエに罵られるもアクセルは気にしない。

 甘味料は癒やしであり欠かせないものであり、絶対正義だ。

 

(第一、塩のみなんて味気ないのでは?)

 

 世の中には、塩キャラメル、塩バニラなどがある。

 どうして塩だけに絞ってしまうのか、アクセルには理解できない。

 ……キリエなど、理解しようもないし、したくもないが。

 

「…………?」

 

 視線をカラミアの皿に移すアクセル。

 違和感を覚え、尋ねるべきか考えながら口を開いた。

 

「…………カラミアさん」

「んー、なんだ」

「カラミアさんのポテトの量、少なくありませんか」

 

 アクセルの指摘で気づいたらしく、キリエは眉を上げながらカラミアのほうへ視線を向けた。

 

「アクセルのポテトがホイップに埋もれていて気づきませんでしたが。

 確かに、意図的に減らしているように見えますね」

 

 訊かれてまずいことだったのだろうか。

 カラミアは右手のナイフをテーブルに置くと「あー」

 

「最近、ふと……すぁーして……」

「はぁ?」

 

 ――ズバシュ

 

 空気を裂くような音を発し、フォークがテーブルに突き刺さる。

 右手の真横に刺さったそれを目視し、カラミアは手を引っ込めた。

 

「危なっ! フォークを投げるな!」

「問題ありません、デザートフォークですし」

「小さけりゃいいって問題じゃないだろ」

「しかし、小さいことは問題です。

 小声かつ不明瞭で聞き取れませんでした。ハキハキと話してください」

「ハキハキとって……」

「次は心臓を狙いますよ、ナイフで」

「ああ、わかったわかった!」

 

 カラミアはため息をつきながら両手をあげる。

 

「……最近、太った気がするんだよ。

 バカ食いしてるつもりはないんだが、ないからこそ気になるっつーか」

「ふうん……」

 

 キリエは右手を自身の頬にあて、カラミアをじっと見つめる。

 

「体型を売りにするような職業ではありませんし、

 他人に迷惑をかけていない範囲であれば気にせずともよいのではと思いますが。

 悪くない心がけですし、ここは素直に称賛してあげましょう。

 おのれを甘やかした結果、ぷくぷくライオンになられるのは困りますし」

「ああ。ヘイディと見分けがつかなくなるのは………………困ります」

「あれは特殊だ、努力したところでなれないだろ」

「とはいえ太りたくないのであれば、今日の夕食はミスチョイスですよ。

 揚げたポテトを食べながらダイエットを宣言するなど、

 非暴力主義を唱えながら相手の右頬を思い切り殴るようなものです」

「称賛してねえー……そういうツッコミが嫌だから言いづらかったんだよ」

 

 カラミアはポテトをフォークに刺しながら、「ってかさ」と続ける。

 

「少食のキリエはともかく。

 なんでフツーに生活してる俺が太って、アクセルが太らないんだよ。

 世の中の法則ぐにゅーってねじ曲がってませんこと~?」

「それは――」

 

「ねじ曲がってませんよ」とアクセルの言葉を遮るキリエ。

 

「アクセルは元はブリキ製。ちなみに私はカカシ。

 いくら養分を取り入れても変わらないんです。

 ルーツが『生き物』の方は不便で哀れで可哀想ですねえ」

「ぐっ……」

「……カラミアさんの場合、デスクワークが多いのも原因かと。

 巡回の仕事を増やすのはどうでしょう」

「そうしたいのはやまやまだが、書類仕事が多くてなー。

 椅子に座りながら痩せら+れたらいいのに」

「なにを、思春期の乙女のようなことを……。

 痩身を考えているのなら、仕方ありませんね」

 

「何が?」と首を傾げるカラミアに、不敵な笑みを浮かべるキリエ。

 

「今晩のデザートにケーキを買ってきたのですが、

 カラミアは食べないということで……」

「はぁ? 食べる、食べます! キリエのおごりなんて珍しい!」

「カラミアさん……」

「あー……ダイエットは明日からってことで! いいだろ、キリエ?」

「ふふ、ぷにぷにライオンになっていくさまを観察するのも面白そうです」

「キリエ…………まさか、カラミアさんを太らす気で買ってきたのか」

「ふふ……さあ、どうでしょうね」

 

FIN

 

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こんばんは、ゆーますです。

 

前回フライングしてしまいましたが
改めまして平成最後の更新です。
民放が映る環境にいないので、世間の様子がわからないのですが
まるで年末年始のような気分です。
しかしながら年末年始は無味無臭なので、過ごし方がわからず…
とりあえず、飼い猫の写真をいっぱい撮りました!!

 

4月は壊れた心電図のように何事もなかったものの
1件、野鳥を保護センターへ連れて行くイベントがありました。
保護センターでも、犬・ネコ・鳩etc、引き取ってもらえない動物もいるらしく
鳥知識ゼロなので、鳩だったらどうしよう、とビクビクしていたのですが。
私が拾ったのはセグロセキレイで、無事預かって貰えました。
(灰色がかっていたので、最初は鳩の雛だと思っていました)

 

セグロセキレイの寿命は1~2年と短いらしいですが
せっかく生を受けたのですから
傷を癒やして再び空を舞ってほしいです。

 

次は、6月に予定しています周年記念ラジオのお話ができる……はず!
それでは、また来月。今後ともGGRをよろしくお願いいたします!

 

ゆーます


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2019年3月 限定SS『マッチ押し売りの少女』アンデ・エリング+キリエ

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「たのもー!」

――日曜の夕方、オズファミリーの屋敷にて。

 ドンと胸部を強く打つような音とともに、その少女は現れた。

「むむ、誰もいないのか? たのもー、たのもー!!」

「アンデ、声が大きすぎる……迷惑だって追い出されるよ」

 アンデと呼ばれた少女はくるっと体ごと振り返り、

 真後ろで体を縮ませている少年にビシッと指をつきたてた。

「なんでだエリング。

 大きくないと聞こえないだろう?

 エリングも一緒にやれ! こうやって……」

「息を吸って~」と実演してみせるアンデの向こうに何かが見えた気がして、

 エリングは視線を少しあげた。

 次の瞬間――。

「えい」

「ぶひゃっ!?」

 大きな麻袋がアンデの頭をすっぽりと包んだ。

 アンデはビクッと飛び跳ねると、壊れたブリキ人形のようにワタワタ動き始めた。

「あわわ、アンデ……」

 アンデの動きが怖いのか、思考が停止しているのか。

 エリングはただただ慌てふためく。

「真っ暗になった、何も見えない! あとなんか苦しいぞ!!」

 麻袋に手を伸ばしひっかくが、思うようにいかない。

「むあああ、これは袋だな! 誰だアンデにかぶせた奴は! なんか臭いぞ!」

「臭いとは失礼ですね。

 エブリデイ動物まみれの貴女に言われたくありません」

「その声、よくわからない言葉、喋り方!

 オマエ、キリエだな!」

「正解です。ご褒美として麻袋の紐をきゅっと結んでしまいましょう」

「キリエ、やめて……。

 そんなことをしたらアンデが死んじゃう……!」

「大丈夫ですよ、支配者層ですし。

 最悪、酸素が回らずにもっとアホになるだけです。しかし――」

「そろそろ開放してあげましょうか」と、キリエは麻袋を剥ぎ取るように持ち上げた。

 急に明るくなり眩しいやら、呼吸が整わないやらのアンデ。

 目に涙をにじませながら、わなわなと震えている。

 一方、キリエは罪悪感がスプーン1杯分もないらしく、

 いつもの人を不快にさせる微笑を浮かべていた。

「くそぉ、アンデに何の恨みがあるというんだ」

「何の、ですって? すべて挙げるには100万年はかかりますよ。

 ピックアップするにも切り捨てられない思い出の数は両手を10往復しても足りませんね、

 大体、他マフィアのボスたる貴女は存在するだけで迷惑ですし」

「……すごい……。息継ぎせずによく喋れるね……」

「過去のことはさておき。

 どうせ今日もくだらないことをしに来たんでしょう?

 うるさい小蝿は家に侵入される前に殺すに限ります。

 帰るか、袋詰されるかどちらか選びなさい」

「コバエって言うな! アンデ達はちゃーんと用事があってきたんだぞっ! どうだ!」

「どうだ、と言われましても」

「用事、ねえ……」キリエは左手に麻袋を持ちながら腕を組み、右手の人差指で自身の顎を軽く数度叩いた。

「マッチならいりませんよ」

「な……っ」

 どうしてわかった、と言わんばかりのアンデの表情に

 キリエはやれやれと肩を竦めた。

「どうせ、『まだまだ寒いからマッチが必要だろう!

 売ってやってもいいぞぬひひ』とか言うつもりだったんでしょう?

 残念でした」

「キリエ……。アンデは笑い方変だけど……『ぬひひ』は……言わない……」

「エリング、アンデのことを変って言うな!

 しかししかぁし……ぐぬぬ。困った、言おうとしてたことを大体言われてしまったぞ」

「雪は完全に溶け、そろそろ本格的な春の到来です。

 次の冬まで大人しくしていることですね」

 アンデは重たいドアが開くのに似た声で唸った後、「わかった」と首を縦に大きく振った。

「次の冬までマッチをたくさん作る! だからオズ、たくさんたくさん買えよ! 約束だぞ!」

「え、ちょっと」

 キリエの伸ばした手をひょいとかわすアンデ。

 太陽のように明るい笑みを浮かべながら、元気に走り去ってしまった。

「アホすぎて、皮肉が通じないようですね」

「……あれが、アンデのいいところだよ。

 キリエには……わからないだろうけど……」

 エリングはぺこりと頭を下げ、踵を返して歩き始めた。

 アンデの行き先は知っていると言わんばかりに、のんびりと。

「……そうでもないですよ。

 私の身内にも、鉄砲玉のような者が居りますし」

 そう呟き、天を仰ぐ。

 

 燦々と輝く太陽。

 風が、どこからか花びらを運んできた。

 手で掴もうとした瞬間、風に掠め取られてしまった。

「おや、横取りとは意地が悪い」

 キリエはくすくすと笑いながら、麻袋を扉の前へ置く。

 部下、もしくは上司が片付けてくれるだろう。

 デスクワークは、誰も片付けてくれないが――。

 

「本来、カカシは屋外を好むもの。

 少しだけ、散歩するとしましょう」

 いつかの思い出を辿るように、キリエはレンガ道を歩くのだった。

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こんばんは、ゆーますです。

平成最後の更新!!!ですね!

一昨日まで元号の切り替わりは4月7日だとなぜか思い込んでたので

早いなぁという気持ち増し増しです。

2018年度も今日でおしまい。

ポニパチェとしてゲーム制作が進んでいないのが気がかりです。

私ばかりじゃんじゃか行動するのは、それはもう個人プレーでしかないですし

ポニパチェを動かすならさといさんと足並み揃えて……と思っているのですが

止まってしまっていることには変わらないので

お待ち頂いているみなさまには本当に申し訳ないです。

私はただ待つだけではなく実力をつけて、

いつさといさんが戻ってきてもいいようにスタンバイするのみです。

ラジオは今までどおり変わらず続けていきます。

今年は1月(済)、6月、秋と3回を予定しております。

みなさんが聞きたいもの、面白いと思えるものをお届けできるのが1番ですので

お題、ラジオでやってほしいことがありましたらお気軽にメールフォームよりご投稿ください!

それではでは、次の年号でお会いしましょう!

〆として平成最後決め立ったわモーションきめてしまったんですが、

よく考えたら年号は5月からでしたね!!!!! 早とちり!!!

恥を晒しつつ修正します!次は平成最後にお会いしましょう!

P.S.

新しい年号、自分は興津さんのお名前の「和幸」が演技良さげでいいのでは!?と思ったんですが

とんかつ屋が「和幸」なんでなさそうですね~~~とんかつめぇ……


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2019年2月 限定SS『キリエの誕生日』キリエ・アクセル+カラミア

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――ある日、オズ領内にて。

 

「キリエの誕生日プレゼント……」

 

 自らが発した言葉にゾッとしたらしく、

 アクセルは眉間に皺を寄せながら手のひらで口を覆った。

 

(吐き気は……しないが)

 

 激しい違和感に酔ってしまいそうだ。

 

(だが……任務は遂行しないと)

 

 呼吸を整えながら、数刻前のことを思い出す――。

 

  ◆  ◆

 

「キリエの誕生日プレゼント?」

「ああ。今週末だろ、なんか買ってやってくれ」

「正気ですか」

「お前……」

 

 アクセルは嫌そうな顔をしながら、「正気ですか」と繰り返した。

 

「正気を失ってるなら、もっと別なことを言うだろうよ」

「………………」

「そんなに嫌か」

「はい」

 

 カラミアは怒ることなく、「アクセルらしいな」と笑った。

 

(だが……撤回という線はなさそうだ)

 

「………………任務ですか」

「ん?」

「任務だというのなら、従います。

 僕はカポレジーム。ボスの命令は絶対です」

「んー、そうだなぁ……」

 

「いや、任務じゃない。

 友達として買ってやってほしい」

「は!?」

 

 大声を出してしまったことを謝罪しつつ。

 アクセルは「あれは…………友達じゃない、です」と精一杯主張した。

 

「そうか? なら『仲間』」

「はい……まだ許容範囲です」

「どんだけ嫌われてんだよ、あいつ……」

 

  ◆  ◆

 

(仲間だから買ってやれと1時間説得され、今に至る)

 

 キリエは、相談役としては有能。

 敵に回せば恐ろしい存在であることは間違いない。

 

 だが。

 

(あいつは、味方も容赦なく攻撃してくる……)

 

 本人はじゃれているつもりかもしれないが、

 ターゲットにされる側からすればたまったものではない。

 

(なにを買うかは指定されていない。

 ……呪いの人形でも送るか?)

 

 ……『人を呪わば穴二つ』。

 キリエに意図が知られでもしたら、

 姿形がわからなくなるくらい暴言のパンチを浴びせら+れるだろう。

 

(無力な自分が恨めしい……ああもう、どうとでもなれ!)

 

  ◆  ◆

 

「おい!」

 

 屋敷の廊下でキリエを見つけたアクセルは、

 彼に似つかわしくない声音でキリエを呼んだ。

 

 覚悟は決めてきた。

 ……あらゆる覚悟だ。

 

 罵倒される覚悟。

 殴られる覚悟。

 呆れられる覚悟。その他諸々。

 

「なんです?」

 

 キリエは体ごと振り返り、首をかしげた。

 一歩一歩、時間をかけて距離を縮めてくる。

 優雅な足取り。

 油断しているようで、一瞬の隙もない。

 

「……」

「睨むために呼びつけたのですか? 蹴りますよ」

「た……んじょうびおめでとう、キリエ……」

「はあ」

「これ、を………………やる……」

 

 アクセルはおずおずと小さな紙袋を取り出し、キリエへ差し出した。

 

「……ふふ」

「何を笑っている」

「錆びついたブリキのような動きで渡してくるものですから、面白くて」

 

 キリエは紙袋を受け取ると、じっと眺めている。

 

(袋の上から品定めをしているのだろうか……)

 

 何を言われるだろうかと、アクセルは気が気でない。

 

「――貴方から」

「ん」

「どうせ忘れているでしょうけど。

 貴方からプレゼントを貰ったのは、これで4度目。16年ぶりです」

「覚えてない」

「だから言ったんです、どうせ忘れているでしょうと。

 ……その時はとても多忙で。受け取ることを拒んでしまいました。

 それどころか、暴言まで吐いて……」

「……」

「反省はしませんよ。

 忙しかった私に声をかけた貴方が悪いのですから」

 

「ですが……そうですね」キリエは口の端をあげ

 

「ありがとう、アクセル」

 

 柔らかく微笑んだ。

 

「キリエ……だっ……」

「だ?」

「だ、騙されない…………それに、今までの行いだって忘れない!」

 

 アクセルはドカドカと、足音を立てて去っていく。

 

「とか言って、今日のことを含めどうせ忘れてしまうくせに」

 

 紙袋を内ポケットにしまい、ジャケットを整える。

 

「仕方ないから、私が貴方の分も覚えてあげましょう。

 どうせカラミアが噛んでるんでしょうけど。

 ……嬉しかったですよ、アクセル」

 

<終わり>